教皇ミサでの退堂行列

年間第28主日(2021年B年)

佐藤謙一(さとうけんいち) により

2021年10月10日

記事のすべてのバージョン:

第一朗読:知恵の書(知恵7・7-11);知恵に比べれば、富も無に等しいとわたしは思った
答唱詩編(詩編90・1+2+14、11+12、16+17);神はからいは限りなく、生涯わたしはその中に生きる。
第二朗読:ヘブライ人への手紙(ヘブライ4・12-13);神の言葉は、心の悪い考えを見分ける
福音朗読:マルコによる福音(マルコ10・17-27);持っている物を売り払い、それから、わたしに従いなさい

今日の福音はある人がイエスに従いたいという希望をイエスに伝えるところから始まります。走り寄ってひざまずいて尋ねるぐらいですから、大変熱心な人だったと思います。イエスはモーセの十戒を出してこの人に問いかけます。この人は自信をもって「みな、子供の時から守ってきました」と答えます。この人は自分の行動を振り返ったときに十戒はすべて守ってきたと思っていました。しかし、永遠の命を得るためにはそれでよいのかどうか不安だったのだと思います。逆にイエスの問いかけがモーセの十戒だったので安心したのかもしれませんし、同時にそんなものでいいのかとがっかりしたかもしれません。「イエスは彼を見つめ、慈しんで」神の教える道をさらに具体的に教えます。「行って持っているものを売り払い、貧しい人々に施しなさい。それから、わたしに従いなさい。」これに対してこの人は見る見るうちに「気を落とし、悲しみながら立ち去」りました。たくさんの財産を持っていたことが明らかになり、富の魔力が彼には働いていたことがうかがえます。

なぜこの人はイエスの具体的な問いかけにがっかりしたのでしょうか。十戒の後半の6つが問いかけられたとき、彼はすべて守ってきたと答えました。その答えの本質には自分の行動をチェックするための戒めとして十戒を考えてきたことがうかがえます。「殺すな、姦淫するな、盗むな、偽証するな、奪い取るな、父母を敬え」というのは単に個人的な倫理を問うているわけではありません。根底に隣人を自分のように愛せよという共同体的な倫理が含まれています。イエスが十戒を通して尋ねたのは隣人を自分のように愛していますかということです。そうであれば貧しい人々に施すことはできるはずです。それが永遠の命への道であることがわかるはずです。残念ながらこの人は現世の富の魔力に打ち勝つことができず、天に富を積むことができませんでした。

同じようなエピソードとして、ザアカイの物語があります。イエスはザアカイを見つけザアカイの家に泊まりたいと言います。ルカ19章8節からです。「ザアカイは立ち上がって、主に言った。『主よ、わたしは財産の半分を貧しい人々に施します。また、だれかから何かだまし取っていたら、それを四倍にして返します。』
イエスは言われた。『今日、救いがこの家を訪れた。この人もアブラハムの子なのだから。人の子は、失われたものを捜して救うために来たのである。』」ザアカイは兄弟と共に愛の内に生きるようにというイエスの招きに答えました。自分の財産と言っても不正によって得た富ですが、それを貧しい人々に返しイエスに従ったのです。慈しみをもって今日の福音の登場人物を見つめたのはイエスの愛の招きであったのですが、この人は応えることができずイエスに従うことはありませんでした。

23節からは富が強力な偶像であることが述べられます。神が何でもできるお方であるのに、偶像である富に頼ってしまうのです。神の国に入るのは何と難しいことかとイエスは言われています。ペトロは「何もかも捨ててあなたに従って参りました」と言っています。永遠の命という報いを確約したいということが表れていますが、イエスは丁寧に答えます。「『わたしのためまた福音のために、家、兄弟、姉妹、母、父、子供、畑を捨てた者はだれでも、今この世で、迫害も受けるが、家、兄弟、姉妹、母、子供、畑も百倍受け、後の世では永遠の命を受ける。』」イエスに従うことは永遠の命を得ることです。イエスは自らを貧しく生きました。この世から慰めを得ることを求めず、そのために十字架への道を歩みました。そのイエスを信じて従うことによって永遠の命を得ることができるのです。そこには神の言葉以外の保証はありません。今日登場した人のように神の言葉が個人的な戒めであるとしかとらえられないならば、神に従うことはできません。神の言葉が単なる文字にしか見えないならば、富の偶像は強力な力を持ち続けるでしょう。神の言葉を信じること、イエスを信じることが永遠の命への道であるということです。

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